透析まで見据えて糖尿病診療にあたる
糖尿病の慢性合併症である糖尿病性腎症は、現代日本において透析導入原因疾患の第一位であり、医療経済の観点からも重要な疾患です。腎臓病と糖尿病を同一の診療科で扱っていることは全国的には珍しいのですが、患者教育・療養指導を行う際に糖尿病の終末像の1つである腎不全を意識することは、糖尿病診療において重要であると考えています。
私は現在週1回の初診外来を担当しており、ここでは腎臓病・内分泌疾患・糖尿病など様々な患者さんを対応します。その中で最も私が気を使うのは糖尿病と初めて診断がついた方です。当院では糖尿病教育入院を行っており、ここで糖尿病の栄養指導、運動療法、歯科衛生、薬剤指導などを行いますが、入院後はじめに行う授業は糖尿病の合併症についてです。糖尿病治療で最も重要なことは、患者さん自身が糖尿病の知識を得ることであるため、糖尿病で来院した患者さんには診断後早期の糖尿病教育入院をお勧めしています。
糖尿病の慢性期合併症は年単位で緩徐に進行するものであるが故に、合併症が進んだ状態で受診する患者さんは少なくありませんが、合併症や予後について伝えることはその後のアドヒアランスにも大きく影響していると実感しています。
個々の患者さんに合った治療計画を立てる
糖尿病の治療を行う際には、食事療法・運動療法・薬剤(内服・注射)などが中心になりますが、これらを決定する上で患者さんの情報はとても大切です。一般的に糖尿病は完治する疾患ではありませんから、患者さんの一生に関わる診療となります。患者さんの年齢や性別、BMIだけでなく、家族構成や住所、職業、並存疾患といったバックグラウンドを総合的に考慮して治療計画を立てる必要があります。
例としては、タクシーやトラック運転手といった長時間の座り仕事に従事する方に「運動しましょう」、「痩せましょう」、「食生活を頑張って変えましょう」と言っても仕事柄実行することが困難な現実があります。また、薬物治療を行う場合も、低血糖には特に注意が必要な職業です。他には糖尿病のあるがん患者ではステージに応じて治療目標を見直す場合や、高齢糖尿病患者では低血糖の回避を第一に考えた治療を行うなどの配慮が必要です。
糖尿病治療では看護師、薬剤師、管理栄養士、運動療法士、歯科衛生士といったメディカルスタッフとのチーム医療が欠かせません。カンファレンス・ミーティングを行い医師だけでは気づけない点や、異なった立場からの意見などから、より良い治療を目指します。
初診外来は教授クラスの先生が担当するのが常ですが、腎内分泌代謝内科では若い医師が初診外来を担当します。患者さんの治療方針を決定するにあたり、判断に迷うケースも多くありますが、経験豊富な先輩医師に相談できる体制も整っています。早期から外来診療の経験を積みつつ、安心して診療に当たることができます。
3つの専門が集まった科だから資格を取るチャンスも多い
大病院ではそれぞれの診療科が独立しているケースも珍しくありませんが、腎臓、内分泌、糖尿病と3領域の診療を行うため、幅広い症例を経験出来ます。 それぞれの領域の疾患が互いに影響し合う関係にあるため、それぞれの知識が必要だと感じます。
入局時点で専門を決めていない場合にはローテーションの期間を長く取ることが出来、また専門を決めている場合には早期から希望する領域を中心にローテーションを組むことも出来ます。また腎移植やシャント造設を行なっている移植外科での研修も可能です。
入局する時点では専門を決めていない場合でも、それぞれの疾患を経験する過程で専門を決められることや、複数の領域で専門医資格を取ることが出来ることも腎内分泌代謝内科の良さです。
また、女性の医師では育児休暇や時短勤務が取ることが出来、男女でロッカールームも分かれているので、働きやすい環境にあるのかなと、男性の私からも思います。
幅広い知識が身につき、学びやすい、働きやすい環境が整っているのが、腎内分泌代謝内科をお勧めできるポイントです。
*2017年7月現在の内容です。