駒場先生の論文「血液透析患者における副甲状腺摘出術とシナカルセト塩酸塩の比較」がJCEMに掲載されました
J. Clin. Endocrinol. Metab. dgac142 (2022)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35277957/
Parathyroidectomy versus Cinacalcet among Patients Undergoing Hemodialysis
Komaba, Hirotaka, Takayuki Hamano, Naohiko Fujii, Kensuke Moriwaki, Atsushi Wada, Ikuto Masakane, Kosaku Nitta, Masafumi Fukagawa.
【背景】透析患者において二次性副甲状腺機能亢進症は生命予後の悪化につながる深刻な合併症である。二次性副甲状腺機能亢進症を管理する上で副甲状腺摘出術(PTx)とシナカルセト塩酸塩はともに有効な治療手段であるが,両者の直接比較はこれまでなされていない。そこで本研究では,PTxを受けた患者とシナカルセトを開始した患者の生命予後を比較した。
【方法】日本透析医学会統計調査データベース(Japanese Society for Dialysis Therapy Renal Data Registry:JRDR)を用いた。2007年末の時点でPTxの既往がなく,intact PTH値300 pg/mL以上の血液透析患者を対象とした。2008~2009年の間にPTxが実施された症例とシナカルセトが開始された症例を対象に,傾向スコアにより1:3マッチングを行った。2009年末から2015年末の6年間の観察期間における両群の総死亡をCox比例回帰モデルにより解析した。
【結果】2008~2009年の間にPTxは955例に実施され,シナカルセトは8228例に処方された。傾向スコアマッチングにより,PTx群894例,シナカルセト群2682例が抽出された。PTx群のintact PTH値は中央値588 pg/mLから83 pg/mLに,シナカルセト群は566 pg/mLから218 pg/mLに低下した(図1)。血清補正カルシウム値,血清リン値に関しても,PTx群の方がシナカルセト群より大きく低下した。2009年末から6年間の観察期間において,PTx群は201例,シナカルセト群は736例が死亡した。PTxはシナカルセト処方と比較し有意な死亡リスクの低下に関連していた(ハザード比0.78,95%信頼区間0.67-0.91,P = 0.002)(図2)。この関連性はintact PTH値 500 pg/mL以上の症例,あるいは血清補正カルシウム値10 mg/dL以上の症例においてより強く観察された(ともに交互作用P <0.001)。
【結論】血液透析患者,特に重度の二次性副甲状腺機能亢進症を有する症例において,PTxはシナカルセトと比較し死亡リスクの有意な低下に関連していた。厳格なPTH管理が生命予後の改善につながるかどうか,ランダム化比較試験による検討が必要である。