東海大学医学部腎内分泌代謝内科

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研究活動

中川先生の論文「透析患者におけるスクレロスチン、二次性副甲状腺機能亢進症、骨代謝の相互的な関係性」がJCEMに掲載されました

J. Clin. Endocrinol. Metab. 107, e95-e105 (2022).
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34423837/

Interrelationships Between Sclerostin, Secondary Hyperparathyroidism, and Bone Metabolism in Patients on Hemodialysis

Nakagawa, Yosuke, Hirotaka Komaba, Naoto Hamano, Hisae Tanaka, Takehiko Wada, Hiroaki Ishida, Michio Nakamura, Masafumi Fukagawa, et al.

論文サマリー
【目的】
 スクレロスチンは骨細胞由来の骨形成抑制因子で、その血中濃度は腎機能低下とともに上昇する。これまでの観察研究により、スクレロスチンは透析患者の骨代謝回転に関与している可能性が示唆されているが、二次性副甲状腺機能亢進症との相互的な関係性は明らかでない。また、スクレロスチンは副甲状腺ホルモン(PTH)の刺激により抑制されるが、過去の研究ではスクレロスチンが骨代謝に及ぼす影響についてPTHを介する作用が十分に考慮されていない。そこで、われわれは透析患者を対象としたコホート研究のデータを用いて、スクレロスチンと骨代謝との関連性に関して、PTH依存性とPTH非依存性の経路に着目して検討した。

【方法】
 血液透析患者 654名を対象とした前向きコホート研究のデータベースを用い、血清スクレロスチン濃度と骨代謝との関連性について検討した。まず、多変量線形回帰分析にて血清スクレロスチン濃度と骨密度、intact PTH,骨型アルカリホスファターゼ(BAP)、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRACP-5b)との関連性について検討した。次に、媒介分析を行い、PTHと骨代謝マーカーとの関係性にスクレロスチンがどの程度関与しているか検討した。また、骨折イベントの既往、新規発症と血清スクレロスチン濃度との関連性も検討した。

【結果】
 透析患者における血清スクレロスチン濃度の中央値は健康成人の約3〜4倍であった。血清スクレロスチン濃度の上昇は中手骨骨密度の上昇やintact PTH、BAP、TRACP-5bの低下と関連していた。しかし、スクレロスチンと骨代謝マーカーとの関連性はPTHで調整すると減弱した。媒介分析では、PTHと骨代謝マーカーとの関連性は主に直接的作用によるものであり、スクレロスチンを介する作用はわずかであった。血清スクレロスチン濃度と骨折イベントの既往、新規発症との間に関連性は観察されなかった。

【考察・結論】
 以上の結果より、透析患者におけるスクレロスチンの役割は限定的であり、PTHが骨代謝に与える影響も媒介しないことが示唆された。しかし、本研究は観察研究であり、今回得られた知見は限定的に捉える必要がある。近年、スクレロスチンの中和抗体であるロモソズマブが新規の骨粗鬆症治療薬として登場したが、透析患者における効果は十分に検討されていない。腎不全患者におけるスクレロスチンの役割をより深く理解するためにも、透析患者におけるロモソズマブの効果の検証が待たれる。

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