留学たより~スタンフォード大学腎臓内科~田中医師
留学たより
スタンフォード大学腎臓内科 田中寿絵
私は2005年に東海大学を卒業後、同大学付属病院にて初期研修および内科後期研修を行いました。そして大学院を経て、2013年4月からスタンフォード大学腎臓内科に留学をしています。
私が留学を志したきっかけは、大学院生時代に携わった研究にあります。私は、尿毒症毒素と呼ばれる腎不全患者に蓄積する様々な物質の、生体に及ぼす影響について研究を行っていました。実際には、それら毒素を培養細胞に加えたり(in vitro)マウスに投与したりして(in vivo)その影響を観察しました。はじめは、研究手法など何も分からない状態の私でしたが、学内外を問わず多くの先生に一からご指導を賜ることができました。本当に感謝です。そういった経験を通して私は、患者さんと接する「臨床」の仕事もとても楽しいものでしたが、一方で未だ解明されていない事実を明らかにし、今後の医療の発展に貢献できる「研究」という仕事もとてもやりがいのあるものだと強く思うようになりました。そしてその気持ちはやがて「留学して更に研究をやりたい」という明確な意思となりました。
スタンフォード大学は、サンフランシスコから車で約1時間、南に走ったところのパロアルトと呼ばれる街にあります。まるで森のようなその広大なキャンパスには、茜色の屋根をした建物が点在し、とても美しい景観のキャンパスです。古い歴史と伝統を持つスタンフォード大学では、 アメリカ国内外から多くの研究者が集まり世界レベルの研究が行われています。私が所属する医学部腎臓内科でも、基礎研究から臨床研究まで幅広く行われていますが、私はかねてからの希望どおり、尿毒症毒素の研究で高名なMeyer先生の研究室に所属することができました。この研究室では、新しい尿毒症毒素の発見や腎不全医療の更なる改善を目指し、質量分析という方法を用いて研究を行っています。研究室の構成メンバーは、Meyer先生の他スタッフ1名、後期研修医1名、研究助手1名と私の計5人で、他の研究室に比べると比較的規模の小さい研究室ですが、毎日Meyer先生の厳しくも暖かいご指導を賜り、とても充実した研究生活を送っています。
スタンフォード大学腎臓内科では、毎日様々なカンファレンスが催されています。グラウンドラウンドと呼ばれる、スタッフおよび後期研修医が持ち回りで講義を行うものや、抄読会、腎生検カンファレンス、腎移植カンファレンス、臨床研究のカンファレンス等々、様々なカンファレンスがきちんとスケジュール管理されて行われています。他施設からの招待講演も多く行われ、あらゆる知的な刺激を受けられる環境にあります。また内科全体でも、週一回朝の8時から1時間グランドラウンドを行っています。これは学内の教員による講義や他施設の有名な先生の招待講演で、コーヒーの他ドーナツやマフィンなども用意されています。ブレックファーストを食べながら、その道の最先端の話を聞けるとても優雅なひとときです。
アメリカの研究生活で気づいた事の一つに、皆オンとオフの切り替えがしっかりしているということがあります。平日はハードに仕事をするかわりに、休日は家族とゆっくり過ごすという、とてもメリハリのある生活をしています。それに習い私も、休日は主人とサンフランシスコに出掛けたり、近郊にあるヨセミテ国立公園にハイキングに行ったりとオフを思う存分楽しんでいます。この間の冬休みには、ラスベガスからレンタカーでグランドキャニオンやモニュメントバレーなどグランドサークルを回る旅にも出かけました。これらの充実した休日によって私は、また新たな気持ちで研究に励む事が出来ています。残り少ない留学生活ですが、心残りのないよう、研究にそして遊びに頑張りたいと思います。
写真1;キャンパスの中心部からHoover Towerを臨んで
写真2;ラボの風景。Dr. Meyerと同僚のDr. Sirich
写真3;Fellow's graduation partyにて。Division Chief, Dr. Chertow他staff physicianと記念撮影
写真4;ヨセミテ国立公園Tunnel Viewからの景色